アスクル(株)は、物流センターと補充倉庫間の拠点間で商品輸送を行う横持ち計画に AI を活用した需要予測モデルを導入し、このほど同社全国物流拠点への展開を開始した。
AI 需要予測モデルは、同社物流センターとその近郊に位置する補充倉庫との間の商品横持ち指示に活用。AIは「いつ・どこからどこへ・何を・いくつ運ぶべきか」を指示する。従来は、物流センターや補充倉庫の担当者が豊富な経験や知見をもとに、手作業で横持ち計画を策定していた。同モデルによる横持ち計画策定は、需要予測精度向上とともに、作業工数の削減につながる。同モデルを導入した「ALP 横浜センター」では、商品横持ち指示の作成工数が従来比で約 75%減/日、入出荷作業が同約 30%減/日、フォークリフト作業が同約 15%減/日などの効果が得れたことから、同社全国物流拠点への展開を決めた。
〇商品横持ち計画における AI 需要予測モデル導入の背景
同社では、中期経営計画で在庫商品の拡充を掲げ、品揃えの拡大に取り組んでいる。物流戦略でも、物流センター近郊の補充倉庫に余剰在庫を保管することで、物流センターの出荷能力増強とともに、間口活用を最大化する方針を固めた。物流センター・補充倉庫間の商品横持ちについては従来、担当者が経験と知見をもとに、輸送する対象商品、商品数、輸送車両数等を指示する横持ち計画を策定し、物流センターや補充倉庫に指示を出していた。この方法は属人的で、担当者によって予測精度にバラつきが生じるほか、頻繁に発生する緊急の商品横持ち輸送への対応が課題だった。また、担当者の手運用による商品横持ち計画策定は、将来的な在庫商品拡充によって補充倉庫の追加や、横持ち回数の増加が発生した場合、運用し切れないにリスクがあり、システム化が急務となっていた。
こうした状況を踏まえ、同社はAI 需要予測モデルを用いたシステムの自社開発に着手。商品の横持ち計画に関し、 AIが「いつ・どこからどこへ・何を・いくつ運ぶべきか」を指示するシステムを完成させた。その結果、予測精度向上のほか、商品横持ち計画策定にかかる工数の削減を実現。緊急で発生していた横持ち回数が減少し、それに伴っての入出荷作業の減少もつながったとしている。
〇商品横持ち計画における AI 需要予測モデルの効果
AI 需要予測モデル導入により、属人的で担当者の経験と知見で成立していた商品横持ち計画策定が AIによるデータドリブンなプロセスに置き換わり、需要予測精度向上とともに、作業効率向上を実現した。また、需要予測精度向上とシステム化により、これまでは管理が難しく、センター内で保管していた「期限管理品」(賞味期限や使用期限があるもの)の補充倉庫での保管が可能となり、センター内での商品の移動が削減された。
以下の定量・定性実績を踏まえ、同社はこれまで東日本の一部物流センターで導入していたAI需要予測モデルを他の物流拠点にも展開するとともに、同モデルのアップデートも含め、さらなる進化に努めていく予定だ。
【定量効果】
① 商品横持ち指示作成の工数:約75%/日 削減
物流センターや補充倉庫の担当者が手運用で行っていた作業が 同に置き換わり、工数削減。
② 入出荷作業の工数:約30%/日 削減
需要予測精度向上により、臨時便の横持ち回数が減少。それに伴う入出荷作業の工数が減少。
③ フォークリフト作業:約15%/日 削減 賞味期限や使用期限のある「期限管理品」と呼ばれる商品が以前は物流センター2階のスペースを占領し、スペース不足から一時的に上の階に移動させる作業が日常的に発生していた。今回の AI 需要予測モデルの活用により、期限管理品を期限ごとに日次で細かく管理できるようになったため、戦略的に補充倉庫で保管できるようになり、上の階に移動する頻度が減少。その結果、作業時間の大幅削減を実現。