共同配送がなかなか実現できない課題と問題点ーコラム⑥サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

  • URLをコピーしました!

共同配送がなかなか実現できない課題と問題点

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司


物流コストの中で運送費の占める割合は約 50%です。今後、2024 年問題(ドライバーの残
業規制法令)と深刻化されるドライバー不足により更に運送費は値上がりすることが予想
されます。
令和時代になって、運送費の抑制と二酸化炭素削減の手法として“共同配送”に注目が集まっ
ています。
共同配送のモデルは、特別積みみ合わせ事業者(路線会社)が手掛ける混載輸送のことです。
一般的には、ひとつの荷主の貨物を1台のトラックで輸送をします。しかし、路線会社は複
数の荷主の貨物を集荷し混載で幹線輸送・配達までを実行しています。この混載輸送モデル
の非路線会社版がいわゆる“共同配送”と言われています。
共同配送の歴史は古く、自動車部品や電子部品のミルクラン輸送が現在の共同配送の原型
となっています。
共同配送の進化プロセスとして、
①自動車部品、電子部品のミルクラン輸送
②コンビニエンスストアの店舗配送
③家電量販店、スーパーマーケットの店舗配送
④その他小売店への店舗配送
図表1を見てわかるとおり、製造業の共同配送は調達物流・ミルクラン輸送が多く、卸売業
や小売業は顧客や店舗配送が主となっています。



いずれにしても、その難易度は高く荷主と運送事業者の両面で見て成功している事例は多
くはありません。

荷主から見た共同配送のメリット

①車建料金ではなく個建料金なので空きスペース分の費用負担がない
②チャーター便やルート便と比べて配車の手間や残貨リスクが無い
③専属のチャーター便やルート便に比べて排出される二酸化炭素量が積荷分である
一方で、運送事業者から見るとデメリットが多いので簡単には手掛けられないものです。

運送事業者のデメリット

①個建料金なので、積荷量のリスクがある(積載率が低い場合自社負担)
②増車分の空きスペース負担がある(輸送トラック 1.2 台分の量であっても2台分の費用負
担となる)
③配送に加えて、センター運営(TC)コストが固定費である
④物件費や人件費、マテハン、情報システム費などイニシャル負担が多い
⑤共同配送センターの運営は、高いレベルのノウハウと経験値が必要である
とかなり専門化されたサービスであることがわかります。
荷主から見ると、路線会社に変わる共同配送モデルは魅力たっぷりな輸配送サービスでは
ありますが、運送事業者からは難易度の高いビジネスモデル=収益確保が難しいものと見
られています。
今後、集荷日=出発日=原則翌日着は、2024 年以降は難しくなります。
とはいえ、二酸化炭素削減の期待できる施策である共同配送はもっと普及しなくてはなり
ません。
国内において、共同配送比率をもっと高める方法は
①荷主はこれまでの物流サービスを再検討する(翌日や午前中着などのリードタイムの緩
和)
②中長距離や幹線輸送共同配送はトラックが満車にならないと出発しない
②ドライバーの自主荷役(付帯作業)の撤廃もしくは極小化
③情報システム連携の強化(集荷量や納品時間などを AI による自動調整機能で管理する)
これまでは、ほぼ強者の立場である荷主が主導的に共同配送モデルを構築してきましたが、
令和時代は、物流会社が利益創出モデルで共同配送プラットフォームを構築し、荷主はそれ
に乗るか否かの時代がそこまで来ています。
平成時代までの荷主感覚では、新しい物流環境に乗り遅れる可能性がありますので、時流を
よく見極めることが肝要です。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: a896ed6b525f37632c97858bfdf86550.jpg
著者:船井総研ロジ株式会社
    取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
目次