荷主の脅威“荷主勧告制度” ー物流コラム⑬サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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荷主の脅威“荷主勧告制度”

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司

■荷主勧告制度の概要

荷主の皆様はご存知でしょうか?「荷主勧告制度」とは、貨物自動車運送事業法(以下「法」という。) 第64条に より、実運送事業者が行政処分等を受ける場合に、当該処分等に係る違反行 為が主に荷主の行為に起因するものであると認められる場合に、当該荷主に対して、再発防止のための勧告を行うものです。

荷主勧告発動の対象となり得る荷主の行為として、以下のような実運送事業者に対する優越的地位や継続的な取引関係を利用して次の行為を行った場合に適用されます。

①非合理的な到着時間の設定

②やむを得ない遅延に対するペナルティの設定

③積込前に貨物量を増やすような急な依頼

④荷主管理に係る荷捌き場において、手待ち時間を恒常的に発生させているにもかかわらず、実運送事業者の要請に対し通常行われるべき改善措置を行わないこと

また、実運送事業者の違反に関し、荷主の関係者が共同正犯若しくは教唆犯 又は強要罪で公訴が提起された事例その他荷主の指示等が認められた事例などにも適用されます。

ドライバーの勤怠管理や乗車時間管理は運送会社がやるべき事で、荷主は関係の無い問題だと思っている方も少なくはないと思います。しかし、国土交通省の方針はそうではないようですね。

図表1に記載しているドライバーの労働時間に関するルール違反が発生した場合、当該運送会社だけではなく荷主へもその責任問題が及ぶ可能性があります。

これらの労働時間ルールにつての違反等が発生した場合、当該運送会社の調査を経て荷主の関与についても調査が入ります。もし、荷主が指示するなど主体的な関与が認められた場合は、荷主に対して警告荷主勧告が行われます。

荷主勧告に該当する荷主の主体的な関与の事例として、

①荷待ち(発地着地に関わらず)時間の恒常的な発生

②休憩時間や速度制限を考慮しない着時間の指定

③高速道路利用をしなくては間に合わないにも関わらず、高速道路料金を支給しない輸送

④災害等のやむを得ない事象に対する納期遅延のペナルティ

⑤過積載や長さ制限を超えた貨物の輸送指示

これらの事例は、受託した運送会社に問題があると思う方もいるかもしれませんが、取引関係の優位性が高い荷主の指示であるため、荷主の責任を逃れることは難しいのが実情です。

■さらに強化されるドライバー管理

図表1の時間管理は現行におけるルールです。2024年4月1日からは更にドライバーの労働時間管理が厳しくなります。(この法令は働き方改革法案の一つであり全産業に適用される)

現状のドライバーは、月間293時間の拘束時間を守っていればよかったのですが、来春の法改定以降は更に約20時間の圧縮が求められます。これがいわゆる「2024年問題」です。

ドライバーの拘束時間の中でも残業時間に上限が付きます。(図表2参照)

実際のドライバー勤怠管理は運送会社がやるべき事ではありますが、前述の通り荷主からの指示によって労働時間ルールを超過した場合は、荷主責任となることがあり得ることになります。

これは元請け物流会社も同様となりますので、法令順守は絶対的な使命といえます。

物流コンプライアンス遵守は、今や最優先事項として荷主・元請け物流会社の経営課題となります。

                                              【図表2】
著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
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