船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司
PART 1
- コンプライアンス物流時代
これからの物流業界は、“コンプライアンス”が最重要テーマとなります。物流事業者だけではなく、荷主への規制も強化されます。
荷主の留意点として、以下4つの規制があげられます。
①優越的地位の濫用(下請法)・・・公正取引委員会
②ドライバー残業時間規制・・・厚生労働省
③物流革新政策パッケージ・・・国土交通省、農林水産省
④運送体制台帳・・・国土交通省
元請け物流事業者の留意点も荷主と同様の規制となります。(図表1)
昨今、各行政機関が相互連携を行い規制・監視の強化を図っています。筆者はこの取り組みを「物流監視御三家」と名付けました。
2024年問題を機に、荷主も物流事業者もコンプライアンスなくして持続的な成長はあり得ない局面へ突入しました。これまで、物流業界は長らく荷主優位な取引関係で市場が形勢されていましたが、2024年法令を機に大転換を迎えます。
今後の事象として、“コスト上昇” “物流サービス低下” “リーダタイム延長” が想定されます。ドライバー不足の歯止めが効かない中での、2024年法改正は荷主・物流事業者双方へ大打撃となります。法令遵守のうえで、止めない物流をどう構築するかが、荷主・元請け物流事業者への重要なミッションとなります。
【図表1】
- 運送体制台帳の義務化により3PLの評価が変わる
物流革新政策パッケージの中へ、「運送体制台帳」の作成義務化が記載されています。これは物流業界の悪しき慣習である“多重構造”へメスを入れる重要な施策となります。
(図表2)に記載しているとおり、全ト協も2次請けまでに制限するべきと提言しています。運送体制台帳の効果的なポイントは、不透明だった協力会社への依頼内容を荷主・元請けは明確に管理する仕様となっていることです。主な項目として以下5つがあげられます。
①運賃
②労働時間
③労働環境
④安全
⑤取引条件
荷主の物流管理業務を代行する立場の元請け物流事業者は、下請けへ丸投げとはいかなくなります。また、利用運送手数料は運賃とは別途に荷主が負担することとなります。例えば、これまで荷主から10万円の運賃で依頼された輸送を三次下請け事業者が輸送した場合85,000円程度の運賃となります。この取引が、今後、利用運送手数料は荷主負担となり実運送事業者へ運賃10万円が支払われることになります。同じ取引スキームだと、荷主負担が12万円となってしまいます。元請けの役割は自社便もしくは実運送事業者の“集車力”が大きな差別化ポイントとなります。
【図表2】
荷主が元請けや3PLを選定する評価項目に“集車力”が加わることは不可避となります。運送体制台帳の解説は次号で詳しく行います。
次号へ続く