2023年度物流費予算の考え方ーコラム⑨サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

  • URLをコピーしました!

2023年度物流費予算の考え方
     
船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司


■運送相場は急上昇する

2023年1月27日、宅配大手3社の一つである佐川急便が6年ぶりに約8%の値上げを発表しました。2020年からのコロナ禍では、宅配便に関わらず全ての運賃水準は停滞したままでした。
2017年に宅配最大手のY社が値上げを発表し、そこから業界あげての運賃値上げラッシュとなったことは、皆様記憶に新しいことだと思います。

その当時の値上げ理由は、ドライバーの労務環境改善でした。

今回の佐川急便さんは、“物価高騰が続く昨今、宅配便のインフラとその品質を維持・向上することを目的”と発表しています。2024年問題を前にして、ドライバーの残業時間抑制がその中心的な課題であることは間違いないことだと思います。
この発表を機に、他の路線大手や陸運大手も順次値上げを実行することも想像に難くないことでしょう。

今の物流業界におけるドライバーの労働時間問題は、宅配大手や路線大手だけの課題ではありません。国内のトラックドライバーは、全産業の平均と比べて、労働時間は20%多く賃金は20%少ないと言われています。

実際には、以下図表1をご覧ください。

【図表1】

 2024年の法改正は、正に労働者の労働時間圧縮を目的としたものであり、働き方改革の一環です。運送事業者は、ドライバーの労働時間を圧縮すると必然的に運収(運賃収入)も低減します。未だ歩合給比率の高いドライバーは、労働時間を圧縮すると賃金も減少します。運送事業者も売上が減少し経営そのものが立ち行かなく中小運送事業者は決して少なくはありません。

2024年問題は、経営そのものに関わるインパクトの大きい法改正です。従いまいて、今回の大手宅配会社で佐川急便の値上げを機に、全ての運送事業者は生き残りをかけて運賃値上げに動き出します。

■2023年度は上乗せ予算を確保する

物流部門としては、2023年以降は毎年一定額・率の運賃値上げを想定しなくてはなりません。
ではいったい、どれぐらいの値上げを想定(予算化)すればいいのでしょうか?
それを知るには、まず自社の契約運賃が市場価格と比較してどの位置にあるのかを知らなくてはなりません。

【図表2】

図表2の中で、市場価格ゾーン(適正価格)の上限A~下限Bの範囲内であれば、今後の値上がり目安は5%~10%程度を想定すれば十分だと推測します。

しかし、それより廉価なC,Dの場合は、2024年以降の継続を望むならば、大幅値上げ(20%以上)も十分にあり得ます。
更に、ウイズコロナのこれまではお付き合いが継続していたFゾーンでの契約荷主は、最悪の場合突然“取引解消の通知”が来ることもあり得ます。

今回の事例は、4トンウィング車地場便の月極契約の事例ですが、宅配便でも路線便でも中長距離の貸し切り便でもそれぞれこのような市場価格が形成されています。

自社の契約運賃がどのレベルにあるのかを知りたければ、一度当社へご相談ください。有料ではありますが、貴社の契約水準を評価し今後の値上がりリスクを定量・定性の両面で抽出することが可能です。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: a896ed6b525f37632c97858bfdf86550.jpg
著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
目次