第5回 令和時代における拠点配置の考え方(後半)ーコラム⑤サプライサプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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第5回 令和時代における拠点配置の考え方(後半)

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司


前回に引き続き、令和時代における物流センターの拠点配置の考え方を考察します。

⑦BCP(物流 BCP
自然環境の変化により、地震や風水害・降雪がサプライチェーン全体へ甚大な影響をおよ
ぼすケースが急増しています。今回の感染症コロナウイルスの世界的な拡大は、これまで
全く想定外でありました。
 従来の物流 BCP は「いつ来るかわからない」事態に備えるものでしたが、これからは
「いつ何が来てもおかしくない」という考えを持って物流 BCP を策定する必要がありま
す。

・BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)
企業が災害や事故、パンデミックなど予期せぬ事態の発生により操業度が許容限界を超え
てしまい、企業活動が寸断される事態になった際に、重要業務への影響を最小限に抑制
し、早期復旧を行うための行動計画、経営方針のことを指します。

・ 物流 BCP・LCP(Logistics Business Continuity Plan:ロジスティクス継続計画)
BCP(事業継続計画)のうち、物流体制に焦点を当てたものを指します。
 有事発生の際に、事業継続を目途として、物流機能の維持・早期復旧を図るための行動
指針です。東日本大震災においては、想定外の大規模災害が連鎖し、長期の調達難を通じ
た生産レベル低下・停止が発生し、サプライチェーン全体へ甚大な影響を及ぼしました。
 LCP では、災害時におけるサプライチェーンの混乱を具現化させない、あるいは極小化
するための戦略を、拠点配置・運営体制・物流ネットワークの視点から再構築するもので
あるといえます。


⑧交通利便性
ここで言う交通利便性とは、物流センターの立地環境を指します。
 運送事業者が多く集まる立地であることと、働く人の通勤が容易であることが重要です。
今や、首都圏近郊での開発用地が不足し、マルチ型大規模物流センターは関東や関西の郊
外へ進出するようになりました。物流センターにおいては、「人」と「トラック」が命綱
です。いずれも集まりやすい立地でないと、運営そのものに影響が出ます。
 トラックで言えば、集車能力・集荷締め切り時間・空車移動距離などがあげられます。
人で言えば、マイカー通勤用の駐車場完備や交通機関を利用した通勤が可能である立地で
ないと人は集まりません。


⑨省人化対策
各地の物流センターにおいて、30 人や 50 人それ以上の働き手がいる現場は少なくはあり
ません。少子高齢化社会の中で、人ありきの物流センターは3年後5年後果たしてその人
員が確保できているのでしょうか?
 「人手不足」は日本社会全体の課題であり、ポストコロナ時代において最も難題となり
得ます。自動化やロボティクス化が全ての解決策ではありません。取扱商品単価や業界構
造・慣習の関係で、労働集約モデルを継続しなくてはならない業界は少なくはありません。
 まずは、「業務標準化」を行い誰でも就業可能な現場へ改善していくことが肝要です。


⑩運営コスト(荷役費・運賃)
物流センターにおける運営コストは、上述の①~⑨全ての項目が影響しています。
コストが最大の選定ポイントとなりますが、これまで述べたように令和時代は大きくその
戦略が変わっています。
簡単には移転や切り替えが出来ない物流センター構想は、極めて重要な戦略となります。

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著者:船井総研ロジ株式会社
    取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
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