北米西海岸向け海上輸送問題の趨勢ーコラム③サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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第3回  北米西海岸向け海上輸送問題の趨勢

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司

 
■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国(武漢市)で第1例目の感染者が報告され、一気に世界中へ感染拡大しました。日本においては、2020年1月15日に最初の感染者が確認され、その後はご存じの通り2月には全国規模の感染拡大となりました。

 このCOVID-19の拡大と供に、北米向け海上輸送コンテナ料金が急上昇します。
 この件を時系列で見ていくことにします。

 2020年3月頃、世界の工場で生産活動が中止されました。
 この頃は輸送貨物量が激減し、海上輸送料金は急降下しました。その後2020年7月になって、中国・アセアンの生産工場が再開されます。遅れを取り戻すため、急ピッチでの生産となり、北米・欧州向けの貨物量が増大し海上輸送運賃も急上昇しました。この時は一時的な生産停止、再開による需給バランス調整価格と見ていましたが、そこから事態は深刻化します。

 米国における巣ごもり需要が活発化し、「家具」「家電」「インテリア品」「アパレル」「雑貨」「PC関連品」「ホビー品」「ゲーム機」などの家庭内での消費、消耗される品物が爆売れし始めました。この巣ごもり消費トレンドは日本や欧州へも広がることになりますが中でも米国は3度の特別給付金(総額8,500億ドル)が支給され、失業手当や補償金なども過度なレベルでの支給がありました。この一時金の使い道が先述した巣ごもり商品の爆買いへとなったのです。

 中国やアセアンの工場からは、例年8月頃から米国のクリスマス商戦に向けた膨大な商品が輸送されます。この巣ごもり需要とクリスマス商戦が同一タイミングで重なり、まずはコンテナの輸送キャパオーバーとなりました。ここで米国西海岸向けの海上運賃は2倍~3倍の水準へと跳ね上がり、スポット市場では1万ドルを超える事態となりました。

 その後、米国の輸入貨物港のトップシェアであるLA/LB港において、港湾労働者の感染拡大や鉄道・トラッカーなど、物流に関わるあらゆる労働者へCOVID-19の猛威が押し寄せることとなります。

 例年以上の膨大なコンテナ船の到着と感染者拡大による港湾及び国内物流オペレーションの機能低下によって、米国内でのコンテナラウンドが滞ってしまいます。LA/LB港の着港待ちが100隻を超え、鉄道へのアクセス渋滞も1か月待ちなどの異常現象を引き起こしてしまいました。

 あとは皆様もご存じの通り、アジア発太平洋西海岸ルートの輸送運賃は高止まりとなっています。併せて、米国西海岸の港湾労使協定期限が2022年6月末をもって失効となり、現在もILWU(国際港湾倉庫連合)とPMA(太平洋海事協会)との交渉は続いています。今後の見通しとしては、8月末から9月ころには話し合いが決着するのではないかと筆者はみています。

 米国における港と国内物流の混乱は直ぐには解消できずに、このまま今年のクリスマス商戦を迎えることなり、来年の旧正月までは郵送枠がタイトな状況が続くものと思われます。

最後に今後の海運市況の動向予測を掲載しておきます。
(船井総研ロジ主催“2022年下期物流時流予測セミナー”より抜粋)

著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
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