物流革新緊急パッケージその2ー物流コラム⑰サプライチェーンサプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司

前号に続いて、物流革新緊急パッケージについての考察をお伝えします。

(2)物流の効率化

①即効性のある設備投資の促進

ここでは具体的に「バース予約システム」やフォークリフトの導入、自動化・機械化などを推奨しています。バース予約システムについては、配車担当者やドライバーのアプリ登録の煩雑さなど課題がありますが、いずれはフロントシステムの一本化が図れてその手間も無くなることを期待します。

②物流GX(グリーン・トランスフォーメーション)の推進

脱炭素社会に向けた取り組みであり、物流業界としては特にCO2削減を示しています。具体的な施策はモーダルシフトや共同配送などの積極活用を促しています。共同配送に関しては、実現の難易度は高いものの配送合理化やCO2削減の効果は期待できます。

③物流DXの推進

ここでも、具体的に「自動運転」や「ドローン物流」「自動搬送ロボット」「フィジカルインターネット」などの装置名や新概念を挙げていますが、少し先の施策となりそうです。

④物流標準化の促進

パレットやコンテナなどの規格統一を明示し、業者間もしくは発着荷主間での物流互換性を求めています。サプライチェーン内においてパレットの規格統一が難題ではありますが、ドライバーの負担軽減のためにも推進したい施策です。

⑤道路・港湾等の物流拠点に係る機能強化・土地利用最適化や物流ネットワークの形成支援

今後、ドライバーの負荷軽減策として中継輸送が重視されます。その拠点整備や業者間のネットワークについて言及しています。物流総合効率化法などの更なる整備により開発が困難であった市街化調整区域などの物流用地化に期待したいですね。

⑥高速道路の速度規制(80km/h)の引き上げ

この問題に対しては、いかにドライバーの安全を担保できるかが極めて重要なポイントとなるため、今後も十分に議論を重ねて欲しいと思います。

図表1は、筆者がX(旧Twitter)でこのテーマに関して現役ドライバーへアンケートを取り、その時のコメントを纏めたものです。

図表1

⑦労働生産性に向けた利用しやすい高速道路料金の実現

緑ナンバートラックの高速道路割引については、更なる議論が必要だと思われます。

⑧特殊車両通行制度に関する見直し・利便性向上

⑨ダブル連結トラックの導入促進

⑩貨物集配中の車両に関わる駐車規制の見直し

⑪地域物流等における共同配送の促進

⑫軽トラック事業の適正運営や輸送の安全確保に向けた荷主・元請事業者等を通じた取り組み強化

⑬女性や若者等の多様な人材の活用・育成

後半は、かなり細かな施策や示唆が⑧以降続いています。荷主と元請物流事業者は、各項目に自社で対応可能なのか否かの評価を行い、物流最適化のアクションプランを作成することをお勧めすします。

  • 荷主・消費者の行動変容

この項では、荷主の経営者層に対して意識改革や行動変容を促しています。

2024年問題は、ひとつの部門組織である物流部や物流事業者のみでの対応は困難であるため、組織もしくはサプライチェーン一体となって改革を実行することが我が国の物流オペレーション安定化に大きく関わってきます。また、政府も巻き込んだ消費者への意識改革も2023年春から行われたことで国策レベルの改革が期待されます。

2024年施行まであと僅かとなりました。荷主・物流事業者ら読者の皆様は、自社の持続的な成長を実現するためにも、是が非でも今回の2024年法令を遵守し、物流オペレーションの細部に至るまで管理強化を図り、コンプライアンス物流を全うすることを切に願います。

著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
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