物流の適正化・生産性向上に向けたガイドラインー物流コラム⑱サプライチェーンサプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

  • URLをコピーしました!

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司

 「物流の2024年問題」への対応を加速することを目的として、経済産業省、農林水産省、国土交通省の連名で、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」が策定されました。今号はその内容についてコンサルタント視点で考察します。

目次

1.物流業務の効率化

 ドライバーの拘束時間短縮化を図るためには、“待機時間問題”について事実確認と原因の追究を行う必要があります。ガイドラインの中では「2時間」が目安の上限とされています。積み地における待機時間削減は、既に多くの企業が取り組んでいます。一方で改善が必要なのは荷受け時の待機問題です。こちらの改善策は、「バース予約システム」「午後納品」「曜日分散」などの方策が有効ではありますが、そもそも荷受け施設(倉庫・物流センター等)の受け入れキャパシティ能力を上回る物量が届いていることが最大の問題です。

 荷受人の納品受け入れ体制を上回る物量が到着すると、当然のことながら渋滞することになり荷卸し待機が発生します。これは、時間当たりの受け入れ作業能力を納品物量が上回っていることが原因であり、発注コントロールが機能していないことになります。納品物量の把握とコントロールは、今後物流業界へ大きく影響を与える需要項目といえます。

  • 運送契約の適正化

 運送契約の書面化が出来ていない取引は早急に契約書を作成する必要があります。料金に関しては、「運送」「燃料サーチャージ」「付帯作業費」「待機料」など、運送とそれ以外に発生する費用に関しては、別途取り決めをする必要があります。従来は運賃へ包含されていた「高速道料金」も別途実費を支払うことが求められています。

 ここの項で新しい管理概念となる「取引台帳」の作成を荷主もしくは元請け物流事業者へ求めています。これは物流業界における多重構造問題を解決させる一つの管理手法です。取引台帳の中で、「実運送事業者」「運賃」「取引条件」などを明確化します。実運送事業者へ荷主が取り決めた運賃が適切に支払われているのを確認するための管理台帳なのです。物流業界は、元請け物流事業者から下請け運送事業者への運賃は“クローズドブック”という荷主には見えない契約方式が一般的です。例えば、荷主が10万円の運賃を元請け物流事業者へ支払った場合、一次下請け事業者へ9万円が支払われ、更に二次下請け事業者が存在する場合8万数千円と再委託の度に減額されます。この減額方式にメスを入れる管理手法が「取引台帳」となります。下記に、物流の適正化・生産性向上に向けたチェックリストを掲載していますので、一度貴社の実態を確認してみてください。

  • 安全の確保

 荷主は異常気象時において、無理な輸送依頼をせずに、輸送の中止や納期の延長を指示することが求められます。ドライバーの安全を守るためには、荷主自らが判断をしなくてはなりません。

 詳しくは下図を参照してください。

著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏

                    

目次