第2回 物流事業者から見た 2024 年問題の実情
船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司
■物流事業者から見た 2024 年問題の実情
2024 年 4 月 1 日から施行されるドライバーの総残業規制は、中小運送会社にとっては死活問題
でありますが、失われたコロナ禍約 2 年間の影響で、一部の陸運関係者は既に諦めムードが漂っ
ています。本来は規制前の 2019 年頃からこの問題に対する対策を、少しずつ時間をかけて行う
べきでした。しかし、2020 年 2 月に遭遇したコロナショックによる景気減速
によって、運輸業界全ての対策活動に待ったがかかりました。荷主にとりましては、かなりの圧
力を感じられた運賃値上げ要望が、コロナによって途絶えてしまい安堵された荷主も少なくはな
いでしょう。2020 年~2021 年は国内の荷量が約 20%もダウンしました。その結果、荷主や元請
けに対して何ら要求や要望は出せない業界構造であることが露呈してしまいました。
■物流 2024 年問題の対策 その1【取引内容の精査】
物流事業者の対策として、まずやって頂きたいことは、荷主や元請けとの取引内容を全て明確に
することです。社番ごとに1台ずつの業務内容と契約内容を荷主単位で整理します。出勤時間か
ら始まり、時系列に全てのプロセスをフロー図として明文化するとわかりやすいと思います。
ここでの留意点は以下の通りです。
①現在の配車内容や定期コースで営業利益は出ているのか?
②総労働時間及び残業時間が規定以上となっていないか?
③ドライバーの付帯作業が日常的に発生していないか?
④積み込み時や荷降ろし時の待機が日常的に発生していないか?
⑤その他ドライバーの労働時間・残業時間に影響を及ぼす事象がないか?
⑥荷主との間に複数の中間業者が介在し、多重構造となっていないか?
■物流 2024 年問題の対策 その2【取引改定顧客の順位付け】
各荷主の現状整理が終わると、一覧表を作成して取引内容の改定を申し入れる顧客の優先順位を
付けることをお勧めします。運賃水準が低いのか、労働時間が長いのか、付帯作業や慢性的な待
機が発生しているなどの情報を細かくチェックします。わかりやすく言いますと、ドライバー単
位の業務棚卸を行います。
特にドライバーが行っている付帯作業や待機などは、国土交通省が発行している取引ガイドライ
ンなどを活用して気長に荷主や元請けへ改善要求をし続けることが重要です。
荷主にとりましても、長年ドライバーが積み込み作業やリフト操作をやってくれているので、特
に問題は無いという認識は大間違いです。ドライバーの拘束時間や安全・身体的な負荷・ストレ
スなどに関わることは早急に改善すべきです。
【取引改定顧客リスト】の事例
■物流 2024 年問題の対策 その3【社内改革】
3つ目の施策として、賃金テーブルの改定や勤務ローテーション改革が求められます。例えこ
れまで不平不満も無くやってこれたとしても、2024 年 4 月以降は通用しなくなります。配車
手法の見直しや1車1人制度もこれを機に検討するべきでしょう。
2024 年になって急激な改革を行うのではなく、従業員と綿密な対話を重ねて少しずつ時流環
境に合致した制度を作ることをお勧めします。
改革はいつから初めても遅くはありません。