国交省/新モーダルシフトの推進 2025年の物流業界における至上命題とは㉓サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部 チームリーダー
井上 真希

 国土交通省は令和6年11月22日「官民物流標準化懇談会 モーダルシフト推進・標準化分科会」を開催し、物流分野におけるモーダルシフトの促進に向けた対応方策の取りまとめ案が公表されました。多様な輸送モードを活用した新たなモーダルシフト(以下、新モーダルシフト)の対応方策は資料①にてポイントを整理しています。本会合は「2030年度に不足する輸送能力約34%の解消をより確かなものとすべく、陸・海・空のあらゆる輸送モードを総動員し、ドライバー不足や物流網の障害に対応すること」を目的されています。新モーダルシフトは従来の輸送モード転換(鉄道・内航船)だけでなく、航空機も加えて、環境負荷軽減やデジタル化、多様な輸送手段の融合を特徴としています。

資料①:国土交通省「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」資料より引用し、船井総研ロジにて作成

 これらの背景には2024年問題が大きく関わっています。2024年問題に対して、何も対策を行わなかった場合には、トラックの輸送能力が2024年には14.2%、2030年には34.1%不足すると試算されています。また、トラックドライバーにおいては2030年には52万人まで減り、ピーク時期(1995年)と比較すると約5割減といった状況が予測されています。トラックドライバーは毎年約2万人減っていることになり、労働力不足は既に顕在化しつつあり「ドライバー不足」による影響を実感している企業が増えているのではないでしょうか。(資料②)

                                 資料②:船井総研ロジ作成

 2024年問題への対応、そして迫る2025年になって、いきなり出遅れスタートとならないように自社の物流課題を正確に捉え、やるべきことを明確にしておく必要があります。特にトラックによる長距離輸送が困難となっており、大幅な値上げリスクの可能性があります。「輸配送の効率化」への取り組みは必須であると言えます。今回は政府が推し進める「新モーダルシフト」に焦点を当て、検討を進める上で抑えておくべきポイントを整理します。まず、前提としてモーダルシフトは、単に輸送手段を切り替えることではありません。全体的な物流戦略の見直しが伴うものですのできちんと計画に落とし込んで進めていく必要があります。(資料③)

                                                   (資料③)

 上記、Step1「物流の全体像とコストの把握」は自社の物流課題に対して改善活動を進める下準備としても必要な取り組みとなります。

 2024年は「コンプライアンス遵守」が至上命題となりました。2025年はコンプライアンス遵守に加えて「サステナビリティ:脱炭酸社会に向けた環境負荷軽減への取組」「物流DXの推進:物流効率化と競争力向上ためのデジタル化」を統合的に実現することが求められます。3つの重要な柱を抑えつつ、物流における時流変化に取り残されないよう2024年の残課題の整理と2025年のやるべきことの優先順位を明確にしておくことを推奨します。

著者:船井総研ロジ株式会社      
          ロジスティクスコンサルティング部 
チーフリーダー
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