物流関連2法改正「CLOの役割と責任範囲」について ㉒サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部 チームリーダー
井上 真希

1.物流関連2法改正について

    2024年4月に物流関連2法が成立し、物流に関わる全事業者に対する法規制が本格的に始まりました。本稿を読まれている荷主企業、物流企業であれば既にご存知であると思われますが、改めて物流関連2法の改正内容と取り組むべきことについて整理します(図表①)

    物流関連2法とは、「流通業務総合効率化法」「貨物自動車運送事業法」の2つの法律のことを指します。「流通業務総合効率化法」は荷主企業と物流企業が対象となり、物流効率化による輸送キャパシティ不足の回避を目的として取り組み内容が定められました。改正ポイントは特定事業者に選定された場合には中長期計画の策定及び物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられました。物流統括管理者の選任に関しては荷主企業が対象となっています。「貨物自動車運送事業法」は物流企業と軽トラック事業者を対象とし、多重下請け構造の是正及び適正運賃の収受及び安全対策の規制強化を目的として取り組み内容が定められました。改正ポイントは実運送体制管理簿の作成及び運送契約の書面化・交付の義務化と特定事業者に選定された場合には、適正化に関する管理規程の作成及び責任者の選任を義務付けられました。なお特定事業者の指定基準値については、現時点では検討段階でありますが、例えば荷主企業の場合は「取扱貨物の重量年間9万トン以上(上位3,200社程度)」といった指定基準値が検討されています。特定事業者の種類と指定基準値は今後行政などで設定(指定)されます。

    今回は改正ポイントの一つである特定事業者に選定された場合に義務付けられている「物流統括管理者(CLO)選任」に関してその役割と責任範囲についてお伝えします。

                                                     図表①:船井総研ロジ作成
    • CLOの役割と責任範囲

       CLOはChief Logistics Officerの略で、「物流担当(執行)役員」などと訳されます。米国などではトップになる方の登竜門の一つのような存在であり、重要な役職です。日本では今年に入ってCLOを新設した企業が、少しずつ増えてきた印象を持ちます。CLOは、物流戦略およびサプライチェーン管理における最高責任者として、社内外へのリーダーシップを発揮する役割を担います。自社における物資の流通全体を統括管理する者として上記の業務を行う者であることから、基本的には役員・執行役員等の経営者層から選任することを推奨しています。前項で説明した通り、対象は特定荷主企業となります。物流統括管理者を選任した際は、遅滞なく氏名と役職を所管大臣に届け出なければなりません。解任したときも同様に届け出の必要があります。物流統括管理者を選任しなかった特定荷主企業は、100万円以下の罰金刑が科されることなります。

    CLOは販売物流だけではなく、調達物流までサプライチェーン全体をしっかり見ていくことが重要です。そのためには、まず社内の関係部門(物流・調達・販売等)間及び発荷主、物流事業者、着荷主の連携体制の構築が必要です。その他には定期報告書の作成やトラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修の実施、設備投資計画の作成・実施評価もCLOの業務内容として新たに明記されている内容となります。自社の物流において課題抽出するためには各関連部署の前後工程まで含めた情報とモノの流れを可視化する必要があります。一時的な改善や部分最適な運用ではなく、全体最適であるかの視点で、サスティナブルな物流を実現できれば収益だけでなくCS(顧客満足度)もUPを図ることができます。CLOの業務内容は下図を参照してください。

    著者:船井総研ロジ株式会社      
              ロジスティクスコンサルティング部 
    チーフリーダー      
    井上 真希 氏 
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