ポスト2024年問題 次なる課題はー物流コラム⑫サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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ポスト2024年問題 次なる課題は

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司


■ドライバー減少は止まらない

2024年法改正が全ての運送業約6万2千社で実現できたとしても、ドライバー不足は解消しないと思われます。

当社試算によると、毎年約2万3千人程度のドライバーが純減しています。

これは図表1の通り、①毎年入社する新卒者+②他業種からの転職者がその1年間での増加ドライバー数となります。③定年や高齢による退職者+他業種への転職者がその年の減少ドライバー数です。その差が約2万3千人となるわけです。

【図表1】

この状態は2020年から3年間続いています。

2024年4月よりドライバーの残業時間規制が実現し、総労働時間が短縮しても、賃金水準の上昇や福利厚生の向上が見直されないと、ドライバーの減少は止まらないとみています。

運送業としては、2024年規制の実現を図るには、賃金水準を上げるためにも運賃値上げは不可避となります。

2024年以降想定されるシナリオ

図表2をご覧ください。

2024年以降想定されるシナリオを明記しました。
どれか一つが当てはまるのではなく、それぞれの特徴が混じり合った環境に進むものと予測されます。

  1. 実際には特に何も起きない。この景況感が続き、荷主優位なまま運賃値上げも一部に留まる。ドライバー不足が今以上に深刻化します。
  2. 運送事業者の残業時間削減は浸透する。しかし、運賃値上げ率は期待した通りにならない。そのため収益アップが図れない状態となり企業経営が悪化する。運送事業者の倒産や廃業が続出する。
  3. 運賃水準は順調に毎年10%程度上昇する。しかし、インフレ社会となり、全産業の給料水準も上がるため、現状の格差が縮まらずドライバー減少は継続する。
  4. 貨物量が輸送力(ドライバー数とほぼ比例する)を上回るX点に到達し、荷主と運送事業者の立場が逆転する。需給バランスが崩壊し、運賃水準は一気に20%~30%上昇する。
  5. 運賃水準が急激に上昇する。そのため、中小企業荷主が対応できず輸送難民化する。運送事業者は運ぶ荷物や拘束時間、付帯荷役の有無などの観点から荷主を選ぶ社会となり、一部の荷主は運賃値上げだけでは引き受け手が見つからず、輸送が困難となる。

【図表2】

今が大転換期であることの認識が必要

今回の2024年法改正は、物流業界にとっての大転換期となります。

昭和平成とこれまでは荷主優位な立場の時代が続きましたが、この法改正以降激変します。

図表3はこのままドライバー不足時代が続けば、輸送を拒まれる可能性のある荷主一覧となります。

待機時間や付帯作業及び運賃交渉に対する対応などは、今後荷主が規制されます。

既に、内閣府・国土交通省から物流革新に向けた政策パッケージが議論されています。また、公正取引委員会は“荷主による物流事業者に対する優先的地位の乱用を効果的に規制する観点”から公正化に向けた調査を継続的に行っています。

今まさに、官民一体となってこの2024年問題を乗り越えて、国内における重要なインフラ産業である輸送体制を強化しようと動いています。

荷主や元請け物流事業者の方は、この時流に適応しないと、自らが市場徹底を余儀なくされる可能性があります。まずは2024年対策として、“輸送時間と運賃水準”に意識を向けて改善活動を実行していただきたいと思います。

【図表3】


著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
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