荷主主導で実施可能な現場改善
船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司
■コストに直結する業務プロセスの抽出
物流オペレーションを外部企業へ委託(アウトソーシング)している場合、荷主は主体的に改善ができないと思っている荷主企業は少なくはないようです。確かに契約上は業務委託となっていますので、個々の作業プロセスや業務フローについては口出し無用となります。とはいえ、物流委託先へコスト改善や品質強化を全てお任せにしておいても残念ながら期待通りにならないのはご承知の通りです。物流オペレーションは不断の改善を行うことで最適化されます。現場改善にゴールはありません。
では、どのように物流オペレーション改善を実行すればいいのでしょうか。
まずは、コストに直結する業務プロセスの洗い出しを行います。
物流センターにおける業務プロセスは大きく分けると(1)入荷(2)保管(3)出荷となります。
更に細分化します。
例えば、入荷プロセスだと、①荷受検品数・時間②入庫(棚入れ)数・時間③着車バース停車時間といった項目です。
それら、抽出した項目を委託先との共通視点として管理します。
■KPI設定
改善を実行するには、設定した各プロセスにおける生産性を可視化管理します。例えば、「時間当たり入庫数(棚入れ)」とか「1台当たりの着車時間」などの実態を掴みます。
現状把握が出来れば、次は目標値の設定を行います。
この目標値が改善のマイルストーンであり指標となります。この指標がハイクラスの物流現場では、改善におけるKPIとして広く活用されています。
物流オペレーションにおける改善とは、時間当たりの生産性向上や誤作業の抑止がコストに直結したわかりやすい指標となります。
“品質向上とコストダウンは負の相関”と思っている方がいますが、それは誤りです。
物流オペレーションにおいては、品質が高まれば連動してコストは削減されます。
例えば、誤出荷の多い現場で誤出荷率を下げるために検品ポイントや回数を増やすといった手法があります。これは初期段階ではコストアップになります。しかし、ずっと初期的な処方を続けていればコストアップが固定化しますが、このままでは改善とは言いません。可及的に品質向上のテコ入れをした後に下がった生産性を上げることが真の改善です。
■物流SLAの活用
作業生産性が向上しただけでは、荷主へのメリットはありません。生産性を上げるために荷主側の協力も必要であり、その成果を享受する手法が【物流SLA(サービス・レベル・アグリーメント)】の活用です。
物流オペレーションを受託している側からすると、作業生産性が向上したからといって、作業単価を引き下げられてはモチベーションが下がってしまいます。改善とは荷主とオペレーターの両社が協力してこそ実現できます。その成果を一方(取引関係で優位に立つ荷主)のみで吸収してしまうから荷主が求めるコスト改善は続かないものです。
では、持続的に改善をやり続けるにはどうすれば良いのでしょうか?
その答えは、インセンティブの設定です。
物流SLAでは、成果に対するインセンティブを設定しますので、両者が改善による実益を享受できます。
物流SLAについては、こちらを参照してください。
図表1は、誤出荷率における標準的な指標となります。
荷主と物流受託企業との間で、共通となる管理指標を設定することが、荷主にとってのコスト削減の近道となります。
皆様も持続的に改善活動を実行する手法として物流SLAの導入を検討してみはいかがでしょうか。
図表1
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏