物流部が目指すべきESGロジスティックス
船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司
今後は、荷主の物流部が目指すべきESGロジスティックスについて整理します。
ESGを簡潔にまとめると、企業が長期的に成長するための経営に必要な観点であり、持続可能で豊かな社内の実現を目指すための取り組みです。
ESGロジスティックスとは以下3点を重点的に捉えます。
①E:Environment【環境】温室効果ガス(CO2)排出量の抑制
②S:Social【社会】ドライバーや倉庫作業スタッフの作業・危険などの負担軽減と働きやすい環境づくり
③G:Governance【ガバナンス】危機管理体制の構築や物流BCPの策定など
①E:Environment【環境】温室効果ガス(CO2)排出量の抑制
荷主にとって自社の拠点配置は重要な物流戦略となります。
2024年問題を前に、物流環境は平成の時代から大きく変わりました。
従来は、拠点集約を図り顧客への配送距離が長くても規模の拡大によるボリュームメリットを追求することで、コストダウンが実現できました。
しかし、ESGロジスティックス思考では、拠点集約はマイナス効果とされます。
その理由は、自社工場やサプライヤーから自社拠点(物流センター)までの輸送はある程度大口となり、輸送積載率も厳しく管理されています。一方で、物流センターから顧客配送は顧客の要求するリードタイムや指定時間などの制約があるため、必ずしも高い積載率で配送されていないのが実情だからです。
更に、何年間も拠点配置の見直しを図っていない荷主企業は、配送すべき顧客や調達するサプライヤーとの物理的な距離の不一致が発生しています。
また、在庫管理の不整合によって本来のあるべき拠点での在庫不足が発生し、他拠点から出荷する“越境出荷”なども多く見受けられます。
ご承知の通り、積載率の低い輸送やエリア外の中長距離輸送はCO2排出量に多大な影響を及ぼしています。
このケースは、当然のことながらコストも増大しているはずです。
次に、「過剰な梱包と緩衝材」の利用についての考察です。
日本の物流はいつの間にか、梱包箱にキズが付いていると返品となってしまう業界もある異常な品質を求めています。
グローバルで見ると、こんな国はおよそ日本だけだと思います。
自動車のバンパーもちょっとだけ擦っても直ぐに修理対象となります。
同様に、中身に異常や問題はないが梱包ケースにヘコみやキズがあると返品となり、代替品が再送されることを続けているようでは、世界基準の温室効果ガス削減目標にとても追いつくことはできないでしょう。
梱包材や緩衝材のリサイクル化やそのものを簡素化することは、結果的に温室効果ガス削減に繋がります。
EC物流(Eコマース)では、梱包箱のサイズ不一致もよく見かけます。
日本の多くのEC物流センターでは、業務標準化が図れていたいため、梱包箱の選定は梱包ラインを担当している人間が判断します。
現場ではまさに、「大は小をかねる」的な発想で常にジャストサイズ以上の箱が使われているものです。
当社が2015年に行ったEC物流センターの“梱包箱サイズ調査”では、箱サイズの種類が10~15種類あり、実に約60%の出荷箱が平均1.7倍の大きい箱(サイズ)で出荷されていました。
物流センターのオペレーションは、物流企業へ委託していますが荷主も関心を持って自社の物流センターへ行ってよく現場を見てみると、温室効果ガス削減の何かしらのヒントがあるかもしれません。
次号に続く。