対策迫る!荷主が今から取り組むべき 2024 年問題ーコラム①サプライチェーン全体最適化を図るためのエッセンス

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第1回  対策迫る!荷主が今から取り組むべき 2024 年問題

船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 

■物流 2024 年問題とは
2024 年 4 月からトラックドライバーにおける時間外労働の上限規制が適用されます。
それは、年間の上限 960 時間(月平均 80 時間以内)という一般的な 720 時間と比して 240
時間も長い規制ではありますが、トラック運送業界からすると、途方もなくハードルの高い
内容です。約 97%が中小企業群となっているトラック運送業界の実情は、総労働時間 293
時間/月から、36 協定の上限値である 320 時間内/月でいかに収めるかが経営課題の企業も
少なくはない産業です。


■物流業界 2024 年以降何が起こる
このまま 2024 年 4 月を迎えると、いったい何が起こるのでしょうか?
現在の環境が続いてしまいますと、荷主企業も物流企業も平穏でいられるとは思えません。
荷主企業には5つのリスクが想定されます。
①元請け物流業や3PL からの強烈な運賃・作業費などの値上げ要請
②出荷締め切り時間の早期化
③取引縮小・撤退要請
④実運送会社の廃業や倒産による輸配送分断もしくは停止
⑤国内サプライチェーンの寸断
と荷主企業にとっては尋常でないリスクがあることをご理解していただきたいと思います。


■荷主が想定する 2024 年問題リスク

  1. 中長距離輸送の課題

    2024 年問題を考察するうえで、わかりやすい事例をお伝えします。
    日本の大動脈である関東~関西間の輸送は、一般的には大阪発からの帰り荷で関東積みが
    主流です。大阪の実運送会社は月に 10 回程度荷物を積んで関西を発ち、関東から帰り荷を
    取る往復輸送を行っています。この運行計画では月の残業 80 時間以内を実現することは不
    可能なため、運行回数を 7~8回程度に減便せざるを得ないのです。そうすると、運賃収入
    は 20%~30%減少します。ドライバーの賃金は、運行回数や積荷手当などの歩合比率が高
    くなっており、運行回数が減ることで支給可能な給料も少なくなってしまいます。全産業対
    比で総労働時間は平均20%多く平均賃金は20%低いと言われているトラックドライバー職
    ですが、これ以上給料が下がると多くの方が離職してしまい、新卒や他業界からの転職もか
    なり厳しい状況になることが予想されます。特に中長距離輸送を担っているドライバーは、
    ある程度の長時間労働を受け入れ、かつ毎日自宅へ戻れない労働環境ですが、地場便と比べ
    ると年収の多さが魅力となり従事している方が大半ではないでしょうか。
    2024 年問題の最先鋒は中長距離輸送が挙げられ、特にスポット便市場は激減します。
    実運送会社からすると定期運行をする方が収益も安定し労働時間管理が容易なため、スポ
    ット便は大幅に縮小されると思います。
    実運送会社としては、企業経営を継続するために是が非でも運賃改定を実現しなくては生
    き残りが難しいのです。

  2. 生き残り運賃と市況のギャップ

    では、荷主としては 2024 年問題を無事に乗り切るために、いったいどの程度運賃水準を上
    げればいいのでしょうか?
    図表は国交省から交付された“標準的な運賃”と市況水準を比較したグラフです(図表1
    社分析値)。小型から大型いずれの車種でも近距離輸送(100 ㎞圏内)は約 25%~35%、中長
    距離輸送に至っては 40%以上の乖離があります。この市況価格と契約運賃水準のギャップ
    が元請けや3PLレベルで±10%程度まで引きあがらないと、実運送会社の存続は極めて厳
    しい状況となり得ると想定しています。コロナ環境下によって“失われた2年”の溝は、物流
    業界にとって取り返しのつかない大きな空白期間となりました。
    荷主企業としては、実運送会社へ適正な運賃が支払われることと、多重構造の圧縮・撤廃が
    喫緊の課題と言えるでしょう。

    図表1

今、荷主企業が取り組むべきこと

  1. 2024 年問題のリスク抽出とその対策を講じる
    荷主企業は、運賃水準やドライバーの負荷となり得る付帯作業・待機などの発生が恒常的に
    行われていないかを確認しましょう。
    また、多重構造化していないか?も併せて確認することをお勧めします。荷主企業が支払う
    運賃水準が相場レンジ内であったとしても、実運送会社への下請け構造が三重四重となって
    いる場合、潜在的な課題として整理し対策を講じるべきです。

  2. サスティナビリティ・ロジスティクスの構築
    物流部の使命とは、“何があっても止めない物流”と“予算内で収めるコスト管理”ではないで
    しょうか。将来に渡って持続可能なロジスティクス体制を構築するには、「環境」「安定」
    「ローコスト」「高品質」「最適化」の5つを重視します。中でも ESG 経営が重視される
    令和時代において、環境面は最優先課題であり、「エコロジカル・フットプリント」の削減
    は荷主企業と物流企業に課せられる社会的な責任となります。

  3. 物流 BCP の再策定
    新型コロナウイルス感染症は、今後我々の生活へ密接した“エンデミック”化することが予想
    されています。何があっても止めない物流を実現するためには、有事の際に慌てない想定を
    可能な限り行っておくことです。
    特に、顧客への供給方法として、サプライヤー直送や仮設拠点の設置、引き当て優先顧客の
    ルール作りなどは事前に整備しておかないと簡単には決められない施策です。


著者:船井総研ロジ株式会社
   取締役 常務執行役員
赤峰 誠司 氏
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