第3回 納品を「予約」する制度:アマゾンの調達物流はLT3週でも欠品しない<アマゾンジャパンの物流のどこが凄いのか>―【連載寄稿】湯浅コンサルティングの「物流はおもしろい!」

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株式会社湯浅コンサルティング
コンサルタント
内田 明美子 氏



 アマゾンジャパンの在庫拠点への納品には予約が必要で、ベンダーは注文を受けたのちに、指定された拠点の今後3週間の納品予約状況を見て空いている日時を予約します。
 2024年問題を機に、物流センターの「バース予約」が注目されていますが、初期から「予約」を前提として構築されてきたアマゾンジャパンの調達物流は、「注文された通りに、素早く納品する」ということを至上命題とする日本の一般的な納品とは一線を画す、ユニークなルールで動いています。


 アマゾンの納品には事前予約が必要

 アマゾンの物流センターに納品するには、事前の予約が必要です。ベンダー向けの「Amazon Carrier Central マニュアル」の巻頭に、以下のような文言があります。
 「Amazon のサイト(注:物流センターのこと)への納品には、事前の予約が必要です。Carrier Central 上で『納品予約リクエスト』をお送りいただき、Amazon側が確定した納品確定日時に納品してください。 確定された予約がない場合、一切荷受けが出来ませんのでご注意ください。」
 物流センターへの納品を「予約する」という行動は、ここ数年の間に日本でも急速に、なじみのある慣習となってきました。これは「バース予約」と呼ばれるもので、トラックの待機時間をなくす、減らすという社会的な課題に対応するために、物流センターのトラックの荷積み・荷下ろし場所である「トラックバース」の利用時間を予約するものです。
 MOVO Berth(Hacobu社)、トラック簿(旧モノフル、ハコベル社)、telesa-reserve(TSUNAGUTE社)などの予約システムが提供され、トラックのドライバーがスマホのアプリから、行き先物流センターのバースの利用時間の予約を行っています。バース予約システムでトップシェアを持つMOVO Berthは全国3万7000を超える物流拠点で導入され、80万人を超えるトラックドライバーが利用登録をしているとされています。
(Hacobu社プレスリリース 「Hacobuの「MOVO Berth」、バース管理システム市場で6年連続シェアNo.1を達成(2025年12月11日)」より https://hacobu.jp/news/18183/?utm_source=chatgpt.com


 アマゾンの納品予約は当初から「全席指定」

 アマゾンの納品予約は、基本的な考え方としてはバース予約と同じように、物流センターの荷受けおよび入庫作業のキャパシティを計画的に使うための仕組みです。ただ、アマゾンの納品予約は全世界のアマゾンで適用されているグローバルなルールで、日本でも上陸(2000年)当初から適用されてきた歴史を持ちます。アマゾンの納品は最初から、時間帯ごとの「全席指定」だったわけです。
 日本のバース予約はハコブのMOVO Birthのリリースが2018年で、これ以前も類似の仕組みはあったとしても、まだ新しい慣習です。いうなれば、日本のバース予約は、長らく予約という発想のない「全席自由」だったところへ、席をとるための行列を緩和するため、一部で「指定席」が設けられつつある状況だということです。
ちなみに、「全席指定」方式は外資系小売り企業では珍しくないようです。例えば米国資本で「会員制倉庫型店」を展開するコストコ社も、物流センターへの納品は予約がないとできない仕組みになっています。


 予約は発注番号&トラック1台ごとに、3週間以内の空き枠をとる

 アマゾンの納品予約の方法は、公開されている「Carrier Central マニュアル」に詳細に説明されています。誰がどのタイミングで予約を行い、どんな内容を入力するのか、少し詳しく見てみましょう。
 まず「誰が」ということですが、チャーター便の場合、「荷主または運送事業者のいずれか、両社で検討し予約作成者を決定」とされます。予約作成単位は「発注書(PO)番号ごと」が基本で、アカウント登録画面を見ると「1.運送事業者様」「2.荷主様」が選択できるものの、「発注書(PO)番号は、運送会社様は荷主様にご確認ください」と注記されています。想定される予約者は受注を受ける主体で、通常的には荷主と考えてよさそうです。

出所:アマゾンジャパン合同会社「Carrier Central マニュアル」以下の表も同じ
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/G/01/magicarp/common/Carrier_Central_Manual_JPAmazon.pdf


 予約のタイミングは、アマゾンの納品予約が日本の「バース予約」と大きく異なるポイントです。予約リクエスト画面を見ると、メインの予約確定ルールである「Crystal View」では「最大 21 日先までの空枠が表示される」となっています。次の行の「確定ルールA」はシステムが自動的に予約日時を決めるルールですが、マニュアル内で「ご希望の日時で確定されない場合があるため推奨しません。」とされています。つまり通常予約のタイミングは最大で21日前、3週間前が想定されているのです。
 21日は極端な例だろうと思いきや、マニュアル内の説明は「既に他のご予約で一杯の場合、空枠は表示されません。」「予約作成日から 22 日以上先の日時をリクエストすることはできません。時間を空けて最初の予約作成画面から再度ご予約ください。」と続いています。実際に、枠がいっぱいで、後日、3週間後以降の枠を予約する場合もあるとききます。日本のバース予約ならば翌日もしくは翌々日の納品について、注文を受け配車をするタイミングで行うのが通常ですから、これは驚くほど長いスパンの予約です。

 さらに入力項目を見ると「配送タイプ(トラックのサイズ、「普通トラック」「後方荷降ろしウィング車」「横降ろし専用ウィング車」等の種別)」、「積み荷タイプ(パレット/バラ)」「危険物の有無」「フォークリフトの要不要」といった内容です。(トレーラー番号という項目がありますが、これは「入力不要」と説明されています)。つまり、ここで求められるのは配車以前、どのトラックでどのドライバーが納品するかが決定される以前に入力できる普遍的な情報だけで、トラックの車番やドライバー名の入力はありません。


作業能力を確保したうえで納品を受けるという考え方

 日本のバース予約では、トラックの車番やドライバーの名前が、むしろ、メインの伝達情報です。これは日本のバース予約が納品トラックの受付をスムースに行うことを目的とした、いわばトラックの「事前チェックイン」であることを示しています。
 アマゾンの納品予約は、これとはだいぶ位置づけが異なるようです。アマゾンの納品予約の目的については、マニュアル内に以下のような記載があります。
 「納品サイトでは予め計画した労働力で円滑な荷下ろし・商品棚入れなどの作業を行うため、パレット降しの場合はパレット数量を、バラ降ろしであればカートンの数量を納品先サイトの荷降ろし時間計算に用います。必ず正しい数量の入力をしてください。」
 アマゾンの物流では、顧客への納期は、輸配送や拠点の荷役能力を確保したのちに決まるということを、前回紹介しました。納品予約も同じ考え方に基づく仕組みだといえます。つまり、納品に際してはトラックのバース(着車・荷下ろしスペース)は言うまでもなく、「荷下ろしの作業者」「商品棚入れの作業者」までしっかり確保したうえで、その能力の枠内で、納品予約を受けるのです。
 はじめに発注量が決まり、これに対応して作業者を手配するという発想ではなく、はじめに荷受け能力ありき、これを確保したうえでなければ納品など受けられないというのが、アマゾン流の物流の考え方なのです。

 

リードタイム3週間でも欠品しないわけ

 アマゾン流は理に適っているとしても、ベンダーにしてみれば、注文を受けてから納品までに3週間も時間が空くのは、尋常ならざる事態です。「翌日納品」が広く浸透し、これを翌々日に延ばして計画性を高めるべきだという議論が行われているのが、日本の消費財流通の現状です。3週間も先で大丈夫なのか、欠品にならないのかと、誰しも疑問を持つでしょう。アマゾン側から見ても、国内の通常取引において「商品調達のリードタイムが3週間」というのは、特異な長さです。
 実はこの問題は、ちょっと意外な策によって解消されています。納品予約の枠はアマゾンからの発注書(PO)番号に紐づけて確保すると説明しましたが、各回の納品の内容が紐づけた発注書どおりであることは、求められていないのです。ベンダーに求められるのは、「予約の枠を使って、取引のある商品が欠品しないように在庫を補充する」ということだけです。
 つまり、アマゾンと通常的な取引のあるベンダーならば、リードタイムが3週間といってもその期間中に「受注残」として複数回の納品枠を持っているのが普通です。ここでベンダーは、毎回の納品枠を最大限活用して、欠品が出そうな商品は一番近い納品枠を使って優先補充するようにします。アマゾン側も、届いたものをいったんすべて受け入れます。「注文書通りの内容であるか」をチェックする入荷検品は行わないのです。

 

「注文通りの納品」よりも「欠品しない納品」を求める

 このような取引が成立し、持続できている背景には、いくつかの条件があります。まず何よりも、アマゾンが販売力の高い小売りで、ベンダーにおいて「アマゾンで欠品させたくない」という高いモチベーションがあること、加えて、アマゾンにおける各商品の在庫と販売の状況がベンダーに情報提供されていること、そしてベンダー側にも、提供される情報に基づいて適切な補充内容を組み立てる体制があることです。
 ちなみに、アマゾンに商品を提供する主体には、今話をしている「ベンダー」のほかに「セラー」と呼ばれる主体があります。セラーは「出品者」と訳され、個人でも登録してアマゾンで商品を売ることができますが、この場合の商品在庫はアマゾンではなくセラー自身の在庫です。アマゾンが直接仕入れる「ベンダー」は、一定以上の規模を持つ仕入先です。規模の目安について、アマゾン公式の発表はありませんが、アマゾンへの出品を指南するマーケッターのブログなどをみると「ベンダーになるにはアマゾンとの年間取引額が少なくとも1億円は必要」とされ、「カテゴリーによっては、10億円が下限」の情報もあります。これはアマゾン側が選別するというだけでなく、ベンダーとセラーでは取引条件や商品ページの作成条件、広告の設定等が異なるので、小規模な主体はセラーの立場にいる方が売りやすいのです。
 話を戻して、これら一定以上の規模を持つベンダーに対して、アマゾンが予約枠の中で納品内容を組み立てる裁量を付与しているという事実は、筆者には、かなり大きな衝撃でした。日本の物流では、「お客様からの注文」は絶対的な意味を持ちます。注文に対して1品1個たりとも欠けることが無いように商品を確保することが在庫管理の至上命題ですし、物流においても注文通りの内容を間違いなく取り揃えるように、何回もチェックをかけて納品しています。
 無論、業務品質として「約束通りの仕事ができること」は重要です。しかし、最終的な目標が「消費者に、欠品なくものを届けること」であるとすれば、「(納品先からの)注文どおりであること」だけに血道を上げるのは、ある種の思考停止なのではないか。もっと別のことが重要なのではないか。そんなことを考えさせられます。

 

アマゾンにおける「発注」の意味を考察する

 しかし一方で、「自身の発注書どおりの納品」よりも「ベンダーの裁量による納品」を良しとするというのも、考えてみれば少し妙な話です。それなら自身の発注は何の意味を持つのか?発注しておきながらその通りでなくてよいというのは、責任放棄ではないのか?そんな気もしてきます。
 このあとは筆者の個人的な考察になりますが、アマゾンの発注は私たちが通常考える発注とは異なるもので、欠品なく商品を取り揃えて売り上げを作っていくためのベンダーへの注意喚起であり、「この期間に、御社からこれくらい調達します」という意思の提示ととらえるべきなのかと思います。調達側で取り扱いアイテムを決めて、購入のタイミングと予算の枠を示す、あとはベンダー側で、データに基づいて適切に補充してくださいという役割分担です。
 これに近い考え方は、実は、かなり以前から存在していました。CRP(Continuous Replenishment Program:連続的補充方式)、あるいはVMI(Vendor Management Inventory:ベンダー主導型在庫補充)といった用語を聴いたことがある方も多いでしょう。いずれも1980年代の米国で、小売最大手のウォルマートとメーカーのP&GがPOSデータを起点とする効率的な供給体制を探求した取り組みの中で使われた言葉です。

 同じ米国生まれとはいえ、40年前のウォルマートの用語を21世紀のアマゾンの調達に当てはめるのは、適切ではないと思います。それでも、考え方の根っこのところに共通項がみられるのは、ちょっと興味深いポイントかと思います。
 アマゾンがセラーやベンダーの適切な在庫管理支援のためにどんな情報を提供しているかは、「seller central」等の公開サイトで、ある程度、みることができます。また、アマゾンはセラーとベンダーという二種類の商品提供者を共存かつ競争させて、消費者に欠品感なく商品を提供し続けていますが、このアマゾン独特の販売体制についても、普段、消費者として見ている購入画面から、その特徴を確認していくことができます。
 こうした考察をしていくと、「アマゾンは発注において、決して責任放棄などしていない」というのが個人的な結論となります。次回はアマゾンの在庫管理情報支援と販売体制の特色について、ご紹介していきます。

株式会社湯浅コンサルティング
コンサルタント
内田 明美子 氏       芝田 稔子 氏
    https://www.yuasa-c.com
 

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 この変化の先には物流の「望ましい姿」が見えています。荷主も物流事業者も、これまで経験したことのない取り組みを始めています。その意味では、この変化はピンチではなく、チャンスといえます。
 湯浅和夫、内田明美子、芝田稔子の3名が、物流システムづくり、生産コントロール、そして、ロジスティクス、企業間連携、モーダルシフト、多重下請け構造の変革、デジタル技術の進展によるDX、脱炭素をめざすGXなど、これらの変化をやさしく紐解きます。

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