【コラム新連載シリーズ】 湯浅コンサルティングの「物流はおもしろい!」

  • URLをコピーしました!

株式会社湯浅コンサルティング
コンサルタント
内田 明美子 氏

芝田 稔子 氏

 執筆者より

 湯浅コンサルティングは物流専門のコンサル会社です。社長の湯浅和夫以下、NX総研(旧日通総合研究所)でコンサルの経験を積んだメンバーが2004年に創業しました。物流に課題を持つ会社のコンサルテーションのほか、物流を学びたい方のために、企業内研修や勉強会の企画開催、業界団体のセミナーや資格認定講座への出講も行っています。

 この連載はコンサルタント2名で担当し、物流現場および物流管理における優れた仕組みや興味深い取り組みについて、なるべく具体的に紹介していきます。単なる事例紹介ではなく、その物流の仕組みのどこが優れているのか、何がユニークでおもしろいのか、物流コンサルタントならではの着眼点をもって切り込み、わかりやすくお伝えしていきたいと考えています。 連載第1弾は、アマゾンジャパンです。アマゾンの物流は、かなりおもしろいです。どうぞご期待ください。

■連載第1弾「アマゾンジャパンの物流のどこが凄いのか」全8回の内容(予定)

タイトル概要
第1回 ソータブルとノンソータブル
:商品サイズで区分されるアマゾンジャパンの在庫拠点
アマゾンジャパンの物流センターは全国に80か所あるが、29か所ある中核拠点のFulfillment Center(FC:自社運営)は埼玉県以北には存在しない。なぜ、全国に均等配置されていないのか?「ソータブル(機械仕分け可)」「ノンソータブル」「ファッション」といったFCの取扱商品区分をみていくと、アマゾンの物流の仕組みづくりに係るユニークな考え方がみえてくる。
第2回 納期は都度、約束するもの
:アマゾンにおける納期遵守の考え方
「全国翌日配達」が原則だが、アマゾンジャパンの商品の納期が明示されるのは、注文者が購入品をカートに入れた瞬間である。この瞬間に在庫が引き当てられるだけでなく、在庫拠点での出荷作業、幹線輸送、配達先拠点での荷捌き、配達という一連の活動に必要なリソースが予約可であることが確認され、そののちに(一瞬のことだが)、システムが納期を確定する。アマゾンジャパンにとって納期とは、根拠もなしに取引条件として提示するものではなく、注文の都度、根拠をもって顧客と約束するものなのだ。
第3回 納品を「予約」する制度
:アマゾンの調達物流はLT3週間
アマゾンジャパンの在庫拠点への納品には予約が必要で、ベンダーは注文を受けたのちに、指定された拠点の今後3週間の納品予約状況を見て空いている日時を予約する。2024年問題を機に、にわかに物流センターの「バース予約」が注目されているが、初期から「予約」を前提として構築されてきたアマゾンジャパンの調達物流は、「注文の通りに、素早く納品すること」を至上命題とする日本の一般的な納品とは一味異なるルールで動いている。
第4回 なぜ調達LT3週でも欠品しないのか
:アマゾンの「商品完全名寄せ」の仕組み
ベンダーの納品予約の幅が3週間ということは、アマゾンジャパンからみると、注文した商品の調達リードタイム(LT)は、最大で3週間かかることになる。このように長いLTで、アマゾンジャパンはなぜ、商品を欠品させずに供給できるのだろうか。そのカギは、同じ商品ならばアマゾンの在庫も出品者の在庫も区別なく注文を受けられるという、アマゾン(グローバル)独自の商品の完全な「名寄せ」の仕組みにある。
第5回 メカニズムとノン・メカニズム
:基本理念としての「仕組み化」「自動化」追及
 アマゾン(グローバル)で重視される基本理念のひとつに「メカニズム」化がある。仕組み化、あるいは自動化の意味で、いつでも、誰がやっても同じ答えが出ること、繰り返し可能・予測計画可能であることが重視される。メカニズムの対義語は「グッド・インテンション(創意工夫)」で、現場の創意工夫でうまくやれているという状況は、アマゾンでは良しとされない。この理念を物流でも貫いているところに、アマゾンの物流の強さがある。
第6回 アマゾンラストマイルの変遷ⅰ
:業者利用から委託、自前配送へ
アマゾンの商品配送には①業者利用:ヤマト運輸や佐川急便といった日本の宅配便を利用 ②委託:アマゾン(グローバル)の仕組みで業務を中堅事業者に委託 ③自前配送:アマゾン自身が設置するDS(ディストリビューションセンター)からの配送 の3種類があり、年代を追って①→②→③と主軸を移してきた。その変遷を追う。
第7回 アマゾンラストマイルの変遷ⅱ
:配送能力確保のためのさまざまなチャレンジ
宅配自前化の中で、アマゾンジャパンは配達能力の確保のために、若い世代の運送事業者としての起業の支援や、個人事業主の活用、副業を求めるギグワーカーの活用など、様々な工夫をしている。日本の宅配業界の商慣行ではタブーとされてきた「置き配」を標準サービスにして配達完了率を上げるというチャレンジも記憶に新しい。
第8回 年表で見るAmazon物流史
:まとめにかえて
2000年の日本上陸ののち、アマゾンジャパンが物流について行ってきたことは日本の物流史に大きな影響を与え、あるべき未来を先駆け的に示してきた部分がある。連載のまとめとして、アマゾンジャパンの物流にかかわる取り組みを時系列で整理する。
  株式会社湯浅コンサルティング
コンサルタント
 内田 明美子 氏        芝田 稔子 氏

https://www.yuasa-c.com

                 新刊 「これからの物流を読み解く!」

◆物流の変化のなかで何をなすべきか、が具体的に理解できて、すぐに役立つ、物流関係者必読の本!
 ドライバー不足に端を発して、物流がかつて経験したことのない変革の波に巻き込まれています。ドライバーが不足すれば、必然的に顧客納品に支障が出ます。そこで国は物流関連二法を成立させて、荷主のやるべきことを義務づけ、元請業者には規制をかけてきました。
 この変化の先には物流の「望ましい姿」が見えています。荷主も物流事業者も、これまで経験したことのない取り組みを始めています。その意味では、この変化はピンチではなく、チャンスといえます。
 湯浅和夫、内田明美子、芝田稔子の3名が、物流システムづくり、生産コントロール、そして、ロジスティクス、企業間連携、モーダルシフト、多重下請け構造の変革、デジタル技術の進展によるDX、脱炭素をめざすGXなど、これらの変化をやさしく紐解きます。

目次