第4回 令和時代における拠点配置の考え方(前半)
船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司
■物流センターにおける拠点配置戦略は、令和時代になって大きく変わりました。
昭和・平成時代は、高速道路の発達による輸送リードタイム短縮と投資ファンドが手
掛ける大型物流センターの躍進により集約メリットの追求、規模の拡大がコスト管理
においても有益な施策となっていました。
旧来の拠点戦略であれば、北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州と各
地区に点在していた在庫型物流センターを、3か所から4か所に集約することで大き
なメリットを得ることが出来ました。
最大のメリットはコストです。在庫量も圧縮され在庫金額(資産)が減少しキャッシ
ュフローが良化します。大規模拠点になることで、物流企業から調達するオペレーシ
ョンコストは競争原理が大きく働き荷主にとって有利な契約が可能となりました。
そのような平成時代までの物流戦略は、今転換点を迎えています。
①物流会社が規模の拡大を望んでいない
②ドライバー不足時代となり輸送環境が変わった
③今回のコロナ騒動で災害などのリスクが重視される
とこの 3 点が大きな理由です。
では、今後の拠点戦略(物流センター)を立案するうえで欠かせない視点をお伝えし
ます。
①顧客配送リードタイム
物流センターから顧客への配送リードタイムを何日で設定するのか、顧客への物流サービ
スに最も影響します。今後は受注締め切り時間の短縮や集荷カット時間の短縮が予想され
るため、顧客配送リードタイムは平成時代から変化することになります。
②輸送便利便性
ドライバーの拘束時間や残業時間を管理するうえで、運送会社からみると集荷・積み地の
場所は極めて重要です。地場配送・路線便・宅配便など近隣に各運送便の営業所がないこ
とには集車や集荷カット時間に大きく影響します。特に、路線便を多く利用する荷主にと
って、集荷カット時間は顧客へのサービスレベルに直結します。
③マーケット内在庫
ドライバーの時間管理の観点から、顧客配送は可能な限り距離を短くすることをお勧めし
ます。拠点からの広域配送は平成時代までの手法であり、働き方改革を実行中のドライバ
ー管理を考えると、地場配送でも路線・宅配などマーケットに近い在庫拠点が令和の戦略
となります。
④調達リードタイム
サプライヤーからの調達リードタイムは無視できません。全ての便がチャーター便やルー
ト便ではないため、路線便や宅配便の利便性も考慮します。
⑤輸入貨物対応
海外からの調達割合にもよりますが、港湾地区から離れてしますとドレージ輸送コストの
負担が大きくなります。国内調達と海外調達の比率や物量などの分析が必要です。
⑥センターキャパシティ
ドライバーの拘束時間・残業時間管理に欠かせないのが、物流センターの荷役能力です。
物流センターを設計するうえで、入荷や出荷能力は極めて重要です。待機時間の多く発生
する物流センターは、今後一番に嫌われる物流センターとなり、輸送利便性にも大きく影
響します。
次回に続く。