第16回 物流革新緊急パッケージその1
船井総研ロジ株式会社
取締役 常務執行役員
赤峰 誠司
いよいよ行政が本格的にトラック輸送業界への関与を開始しました。今号では、この政策パッケージの要点をお伝えします。
令和5年10月6日、我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議(第3回)が開催され、「物流の2024問題」が迫る中、賃上げや人材確保など、早期に具体的な成果が得られるよう可及的速やかに各種施策に着手するとともに、2030年度の輸送力不足の解消に向け可能な施策の前倒しを図るべく、必要な予算の確保も含め緊急的に取り組む事項として「物流革新緊急パッケージ」が決定されました。(全日本トラック協会HPより)
(1)習慣の見直し
①”荷主・物流事業者間における物流負荷、待機や荷役時間の軽減”について規制的措置が導入されます。これは、荷主や元請け物流会社の物流オペレーションに大きく影響します。
②“納品期限、物流コスト込み取引価格等の見直し“について言及しています。これは、消費者に最も近い小売業の優越的な取引関係にメスを入れることになります。
③“多重下請構造の見直し“これは最も注力して改善させたい業界の課題でいえます。荷主から元請けへそして再委託、再々委託と物流業界の多重構造は根深い問題です。そこへ今回「取引台帳の作成」という新たな施策が打たれることになりました。どのレベルまで台帳管理が求めているか今後の具体的な発表を待ちたいと思います。
④“荷主・元請の監視強化、結果の公表“、継続的なフォロー及びそのための体制強化について、行政機関伝家の宝刀といえる“社名公表”が明文化されています。既に、アンケート調査や仮称トラックGメンによる具体的な聞き取り調査が現実的に行われています。
⑤“適正運賃収受・価格転嫁“円滑化の取り組み。物流業の価格転嫁率は全産業の中でも低位にあり、物流オペレーションの担い手であるドライバー確保の大きな障害となっています。荷主自身が主体的に世の中の価格上昇機運を察知し、物流事業者からの価格改定の申し出が無くても自ら検討することを示唆しています。この項は、公正取引委員会の下請法ガイドラインとも一致し、今後厳しく監視されることが想定されます。
⑥“「標準的な運賃」制度の拡充・徹底“は国交省肝いりの施策となります。国交省が管轄しているバスやタクシーなどは、運賃表が明確であり個社ごとの大きな乖離はあまりありません。その点、トラック運賃は平成2年の規制緩和以来、競争激化環境が続き運賃水準を適切に評価する相場が市場(マーケット)に委ねられています。その市場は荷主優位な状態が続き、行政機関から見ると取引価格に関する正当性がジャッジできないジレンマがあります。運賃指標のガイドラインといえる標準的な運賃表を市場へ浸透させることで、今後は割増率や割引率などで取引内容に関する評価が可能となり、優越的地位の濫用についても判定され易くなります。
次号へ続く。